私たち日本人は、脂質の摂取については「肥満になる」「血液がドロドロになりやすい」と言った悪いイメージを強く持っています。そのため脂肪の多い食べ物の摂取を抑えている人も多いのではないでしょうか。
ところが、イギリスの『ランセット』と言う権威ある医学雑誌に「総カロリーの中で脂質を35%までは摂れば摂るほど死亡率は下がる」と言った論文が2017年8月に掲載されました。
羽鳥慎一モーニングショーのコーナー「そもそも総研」では、コメンテーターの玉川 徹さんがその新常識に迫るべく、東京大学医学部付属病院 深柄(ふかつ) 和彦 准教授と、長寿の専門家である桜美林大学 柴田 博名誉会長に話を聞きに伺いました。その内容を紹介しています。
現在の日本での脂質の摂取基準は?
現在、厚生労働省が推奨している日本での脂質の摂取基準は、男女共に20%~30%とされています。(参考:日本人の食事摂取基準(2015年版)より)
また、厚生労働省による2015年の三大栄養素の平均摂取割合は
- 炭水化物・・・58%
- タンパク質・・・15%
- 脂質・・・27%
となっています。冒頭で紹介したイギリスの医学雑誌「ランセット」に記載されていた35%より、日本では脂質の摂取量がかなり低い事がわかります。これまでの脂質に対する日本の常識は間違いなのか?
玉川さんはまず最初に「日本の食事摂取基準」策定検討会のメンバーでもある、東京大学医学部付属病院 深柄(ふかつ) 和彦 准教授のもとに行き聞いてみました。
日本での脂質摂取量の基準はどのようにして決められているのか?
深柄准教授の話によると、現在の日本人は総エネルギー摂取量の平均25%ぐらいの脂質を摂取していると言う事実があるそうです。
その事実を基準にして考えられていて、そこに、脂肪はあまり摂取量が少なすぎても、多すぎても健康に悪いと言うデーターもあるので、これらを勘案して丁度良い摂取量と言う事で20%~30%と設定しているのだそうです。
つまり、日本ではイギリスの医学雑誌「ランセット」の論文のように脂質の摂取基準を追跡試験を行って決めているわけではないそうです。
また、深柄(ふかつ)準教授は「ランセットのような有名な科学誌で衝撃的な報告があると皆さんが動揺されるが、一つの報告は事実として受け止めながら、全体を見回していかないといけない。」話します。
さらに、今回、医学雑誌ランセットに35%と記載されていたので、もっと脂質を摂るようにしよう。と言う考え方はとても危険だと指摘。
その理由に、今でさえ脂肪を摂り過ぎる傾向がある人が油断をしてしまい、もっと脂肪を摂り過ぎる可能性があると話します。
また、逆の人の場合もあり脂肪は体に悪いと思って、これまで脂質の摂取量を抑えている人には、脂質をもっと摂取した方が良いと言う良いアドバイスになるかもしれない。とも。
現在、ダイエットなどで若い女性の中には脂質を極端に摂らないで、野菜ばかり食べている人が増えていますが、この食生活には問題がありそうですね。
番組では、もう一人長寿の専門家である桜美林大学 柴田 博 名誉会長にも話を聞きました。
脂肪は健康に良くないという常識は間違い
柴田先生に話によると、タンパク質は体に良くて、脂肪は体に良くないと言った分離した考え方が間違いだと指摘。脂質は私たちのカラダには必要な大切な栄養素。脂肪の摂り過ぎは健康に良くないが、極端に脂肪を摂らないのもカラダには悪い。
脂肪を多く含んでいる食べ物の肉の脂肪組織には私たちの体に重要な栄養素であるビタミンA、ビタミンB、ビタミンEが含まれていて、さらに、動脈硬化や糖尿病を予防につながる善玉物質アディポネクチンや食欲を抑制するホルモンと言われるレプチンや女性ホルモンも含まれているそうです。
そのため、極端に体に脂肪が無い状態が続くと生理不順などの様々な健康トラブルが現われてしまうことも考えられるそうです。
また、BMIも20代なら22位で良いが、60歳や70歳と年齢を重ねてきたら、BMIは少し高くて25~27.5位あった方が良いと柴田先生は話します。
これは、年を重ねていくと、どうしても病気を発症してしまうリスクも高くなり、その時に脂肪が必要になるのである程度は体内に脂肪を蓄えていたほうが良いのだそうです。
成人の体格を表す国際的標準指標。肥満度を示す目安に使われています。
医学的に最も病気が少ない数値として
- 18.5未満なら・・・低体重
- 18.5以上25未満を・・・普通体重
- 25以上を・・・肥満としています。
『標準体重は22』 とされています。
計算式は「体重 (kg) ÷身長 (m) ÷身長 (m)」で算出されます。